ヤミクモ日和

『好きなものを好きなだけ』をコンセプトに、日記・映画(ホラーが主)・小説の感想などを書いています。オススメや見たいけど怖くて見れない映画がありましたらぜひ教えてください。

歌唱力・映像ともに素晴らしい作品「SING/シング」

 先日、友人とともに映画館で「SING/シング」を鑑賞した。公開日から少し経っているものの、劇場にはたくさんの人が来ていた(春休みの力もあるだろうが)。字幕版を見ようと思っていたが、字幕版の上映は一日に一回のみ。事前に調べておけばよかった……。そのため今回は、吹き替え版の感想である。

あらすじ

 舞台は動物たちが人間のように暮らす世界。子供の時、劇に魅了されたコアラのバスターが劇場支配人を務める。しかし、経営は火の車。バスターはヒット作を出せず、前回の劇のスタッフが給料の未払いについて怒って押しかけてくる有様。そんなとき、バスターは歌のコンテストを思いつく。手持ちの1000ドルを賞金とし、チラシを作成するようにトカゲのミス・クローリーに頼むが……。

感想(ネタバレなし)

 とにかく、映像が綺麗だった。動物たちも二足歩行で服を着て歩いているものの、毛や鼻の質感が細かく描かれている。吹き替え版のみの鑑賞だが、キャストの歌唱力も抜群。また、主要な登場人物がどんな環境に居るのか、どういった性格なのかも丁寧に描かれていた。すごく歌がうまいのに、恥ずかしがり屋で人前で歌うことのできないゾウ、ギャングではなく歌手になりたいゴリラ、歌手になりたいけど家事で忙しい主婦のブタ、ロックで成功を夢見るハリネズミなど……。そして、コアラのバスターは劇場に輝きを取り戻したい。それぞれが夢に向かってできる限りの努力をするも、困難やトラブルが立ちはだかる。どん底だから上に行くしかないのだというポジティブなバスターの考え方には好感が持てた。

 以後、ネタバレありの感想

賞金は100000ドル?

 なんと、1000ドルと打ったはずのチラシがちょっとした事故により100000ドルとして打ち込まれ、印刷・配布されてしまっていた。このことから、コンテストの参加を希望する動物たちが押し寄せ、バスターはミス・クローリーとひとりひとり審査していく。100000ドルを欲する人、歌のコンテストに心を弾ませる人……とにかく夢を胸に抱き、動物たちは審査を受ける。しかし、合格者はわずかな数名だった。

夢のためなら何をしてもいいのかという疑問

 合格者のレッスン中、電気料金の未払いのため、劇場の電気が止められてしまう。そのとき、バスターはあろうことかお隣さんの電気を拝借……。アニメーションだしフィクションだからそんなものは見逃せ、と思う人も多いだろうが、最初のオーディションで現実並みの厳しさを見せられているので、現実とどうしても頭が切り離せない人も居そうだ。

バスターとナナ

 バスターが子供のころ、魅了された劇の主演を務めていたナナ・ヌードルマンはなんと友人の祖母だった。ナナは超お金持ち。そこで、バスターはナナにパトロンになってもらおうと考えた。きっと、素晴らしい歌を披露すれば、ナナはお金を出してくれるはず……。バスターはナナを感動させるために、急遽ステージを作り直す。新しいステージは水とイカを使ったものだった。だが、これがハプニングにより大失敗。ガラスのステージは大破し、大量の水が流れ出て劇場は完全に崩壊。100000ドルの用意もできていなかったことも、みんなにバレてしまった。

お父さんと劇場と

 バスターのお父さんは、バスターが劇場を買えるようにと、毛がなくなるまで洗車をしてお金を稼いでくれた。それなのに、自分はお父さんの望むようなことができなかったと落ち込むバスターの姿は胸が痛む。賞金がなくとも、劇場がなくともまた頑張ろうとみんながバスターの元へ来てくれるものの、バスターはネガティブなことを言って追い返す。恥ずかしがり屋のゾウのミーナが来たとき、バスターは本当は夢が叶わないことをわかっているんだと漏らす。自信満々でいつも明るかったバスター。あれは、胸の奥の不安を隠すような振る舞いだったのだろうか?

立ち直るバスター

 バスターは立ち直り、父のように洗車で稼ぐことにした。海パンを履いて体に石鹸をつけ、車を一生懸命こする。慣れないせいか、「遅い」とお客さんが帰ってしまうことも。そこへ友人がやってきて、手伝ってくれる。洗車を頑張る中、ミーナの歌声を偶然聴き、もう一度やってみようと決心するのだった。

自分のために歌う

 もう賞金も何もないことはわかっている。ラストでは動物たちが「自分のために歌う」。外同然の野外劇場で最初は客も身内だけだった。だが、テレビ局の放送により、続々と観客は増えていく。ラストの動物たちの歌や演出は本当に素晴らしかった。字幕版でも観たいな、と思うほどに。歌が終わり、その中にはナナの姿も。彼女は微笑んで拍手を送るのだった。

新たなスタート

 ナナがパトロンになってくれたおかげで、一度は銀行に差し押さえられた土地も、崩壊してしまった劇場もすべて元通りに。最初のシーンで出ていた写真と似たような写真を撮影するシーンから、何もかも生まれ変わったような印象と、再出発の意気込みを感じさせられた。

 

 大人になってくると、夢をみるだけではなく、現実も意識するようになる。この夢は叶えられそうなものか、無理そうか……。夢に向かって走る前に諦めることの方が多くなっていく。本作はハッピーエンドだというのが救いだろう。諦めそうになるのに、諦めきれない。そんな彼らの様子が見ていて辛かった。

 あと、ナナは良いやつだと思う。ラストの歌のシーンで2番目に歌うハリネズミがハリを観客の方に飛ばしまくった(わざとではなく、感情が高ぶって)。ナナにも彼女の針が刺さっていたので、ナナはかなり最初の方から野外劇場に来てくれていたことになる。

 そして何より吃驚するのが、すでに続編の製作が決まっているらしいことだ。早いなー。映画のラストに続編決定みたいなことがあった。キャストの名前も出ていた。だが、続編……。どうなるんだろうか。